佳穂の怒りは我が身も滅ぼすほど?「憤死/綿矢りさ」より
こんにちは、totocco(トトッコ)です(*´ω`)
今回は綿矢りささんの「憤死」の感想をゆるゆると書いていきます^^
「憤死」綿矢りさ
◆憤死
憤死という言葉を聞くと、すぐに思い浮かぶのは世界史。
よく王に捕らわれた教皇が憤死したという文言がセットにされるイメージです。
綿矢さんも作品の中では登場人物が憤死について考えます。
小説のタイトルとなった「憤死」は、同級生の女性が自殺を図ったと聞き入院先の病院へ見舞いに行く主人公の話。
綿矢さんワールド全開の作品で、主人公の女性の性格が悪い。
そして自殺を図った佳穂も性格もまたしかり。
小学生の時から、お金持ちの佳穂のそばにいることでその恩恵を受けていた主人公。
佳穂はお金の力で、友人たちと仲良くしていた。
ところが佳穂にとって転校生の女の子の存在で大きな怒りを覚えることに。
更に学校の飼育当番を逃げていた彼女は多くの同級生に囲まれ責められることになりました。
そして佳穂は飼育小屋へ向かうも、凄まじい怒りをぶつける。
我を失い、怒り狂う佳穂。
それに惚れ惚れとする主人公。
ところが自殺を図った彼女は、拍子抜けしてしまうほどちっとも昔の嫌味な感じがしない。
しかし自殺の原因を聞く内に主人公は、佳穂が未だに当時のまま健在だったことに安堵。
既婚者の男性と不倫関係となり、若さゆえに自分が魅力的だと勘違いしてどんどん進んでいく佳穂の様子を楽しんでいたのだろう主人公。
そしてその男性から捨てられたことで、我が身を滅ぼすほどの怒りを見せる佳穂。
ここまで佳穂のように人間の傲慢さを感じる人物はそうそうお目にかかれないため、一読者としてとても楽しかった。
佳穂のような強烈な人間は、そばにいすぎると嫌気がさすかもしれないが次第に病みつきになっていくんだろうと思わせます。
◆トイレの懺悔室
夏の夕方を思わせる、まだまだ日の照りが強い時間帯が目に浮かぶ作品。
子どもの頃の夏に小学生だった男性が友人と共に近所の中年の男に「大人にしてやる」と言われる。そして儀式的なことをされたあと、男の自宅のトイレのそばにてこれまでの悪さの懺悔をしていくことに。
主人公は蛾をむごたらしく殺したこと、万引きをしたことを告白。するとなぜか心が軽くなった。
その後は男の元を訪ねなかった主人公だったが、友人の一人、ゆうすけはその後も足しげく通っていたことを後に知ることに。
ゆうすけは男にずっと懺悔を続け、次第に2人の関係は怪しくなっていく。
身よりのない男に親切にするゆうすけに感心した主人公だったが、ゆうすけが男を支配していることに気づく。いるはずの男は家にはいない。酒を飲みすぎた主人公がトイレで吐こうとすると、鍵が内側から開かなくなり、ゆうすけが現れた。
彼は主人公に懺悔を始めていく。
人の悩みを知りたい男と、懺悔することで次第に男をマインドコントロールしていったゆうすけ。この関係性も恐ろしいが、ゆうすけがなぜこんなことをしたのかの動機が分からないことが読み手にとって主人公と同様に恐ろしさを味わえる作品となっています。
読み進めながらとても君が悪くなる作品でした。とても怖い。かなりの秀才だったゆうすけとはいえ、まだ10代の子どもに簡単に支配されている男が信じられない。とても異様な関係にザワザワした作品でした。
綿矢さんの作品は、「しょうがの味は熱い」、「かわいそうだね?」に続く3作品目でした。
彼女の描く登場人物たちはかなり癖のある人物が多い。そこがとても魅力的な作家さんですね^^
綿矢さんの作品で次に読みたいのは、「勝手にふるえてろ」。
今は積読本がかなり手元にあるので、しばらくしてからになりそうだけど読んでみたいと思います^^