mastemのブログ

本好きの備忘録( *´艸`)ゆるゆる感想と日常について書いてます

【読書感想文】「ちょうちんそで/江國香織」

こんばんは、totocco(トトッコ)です(*^-^*)

今夜はこちらの本の感想をゆるゆると書いていきますね。

余談ですが、ここ最近は江國香織さんの作品をよく読んでいます。

彼女の紡ぐ繊細な表現がとても好きです。

 

「ちょうちんそで/江國香織

 

◆美しい表紙

今作は2013年の作品です。

表紙が白をメインに美しい植物の模様が素敵です。

作品のタイトルは、主人公の女性が袖がふっくらした(パフスリーブかな?)服のことをちょうちんそでと呼んでいたことから。

 

さて、作品の内容は…。

主人公はとあるマンションで1人で暮らす女性、雛子。

はじまりは、雛子が架空の妹と会話する場面から始まることに。

そして彼女の部屋には頻繁に隣人の丹野という男性が世話をしにやって来ていた。

 

物語は雛子目線の話、正直という男性目線の話、丹野氏目線の話、丹野氏の妻目線の話など、さまざまな登場人物たちが登場していきます。

そうして1つのピースのように全てが繋がっていくことに。

すると雛子がなぜ1人でそのマンションで暮らしているのかが明らかになることに。

 

 

◆感想

雛子はずっと過去の妹にすがって生きているのではないかと思った。

2年前にアル中で病院に運ばれ、その後は老人たちが暮らすマンション(高級そうなところ)で1人暮らしをしていた。

雛子は1度目の夫を病気で亡くしていた。

その夫との間に生まれた男の子は、正直。

その後彼女は和菓子屋の3代目社長の男性と再婚し、誠が生まれることに。

しかし誠が12歳ごろにある男性のもとに駆け落ちしてしまう。

 

まるで彼女の妹のようだと思った。

妹の場合は妻子ある男性との駆け落ちだったけれど。

 

雛子の中でいつも17歳から30歳くらいの妹が登場するのは、現在の彼女の姿が思い浮かばないから。

雛子は妹と疎遠となり、その後行方不明となったことをとても後悔しているんだと思った。

それと同時に妹を思い出さないと生きていけないほど、架空の妹にすがって生きているんではないか。

印象的だったのが、丹野氏と話している時の場面。

丹野氏が妹を探さないのか?と聞いた際に、雛子の心が激しく揺れて壊れそうになったところ。

ずっと架空の妹との会話を楽しんでいた彼女は実は本物の妹が雛子と連絡を取りたがらないという事実に向き合うのを極度に恐れているのだ。

もう連絡が取れない。

もしかしたら死んでいるのかもしれない。

だから雛子はずっと架空の妹との生活で現実から目をそらしていると思う。

これはアルコール中毒からなのか。

 

丹野氏について

まさか彼が過去に人を殺していたとは…。

すごく驚いた。

はじめは事故だったとはいえ、引いてしまった遺体をそのまま濁流の流れる川へ放り込んだ描写がとてもリアル。

それでいてその後の丹野氏の様子もすごくリアルに感じた。

遺体がなくなってしまい、更に発見されることなく月日が過ぎていく…。

自分が本当にあの時誰かを手に掛けたのか…

あれは夢ではないのか…

 

自分のやったことと向き合うのは恐ろしい。

それが犯罪だったら、人生がガラリと変わってしまう。

丹野氏の恐怖、そしてこれは現実ではないという逃避の様子がすごく伝わってきた。

きっとこのことを彼の妻が知ったら、倒れてしまうだろう。

彼女はきっちりと正確に正しく生きていたいタイプであり、夫もきっちりとしていると信じて疑っていないのだから。

 

正直について

母が自分や家族を捨てたことをずっと根に持って過ごしている。

そして妻が母のような、家族を裏切る(少なくとも正直にとっては妻の過去は彼を裏切ったと思うには十分な出来事だったと思う)ような女だったことにショックを受ける。

きっとトラウマになっているのだろう。

ちゃんと家族を築いたのに、もしかしたら次の瞬間に家族がバラバラになってしまうという恐怖心。

今は大丈夫でも、いつか妻は自分を裏切って離れていってしまうのではないかと。

小説の中では、自宅から家出し実家に帰った正直。

そしてラストは妻が娘を連れて雛子のもとへ訪れることになったところで終わりを迎えた。

起承転結という話ではなく、毎日の生活の中で関わっている人たちの心の機微がよく表現されていると思う。

ゆっくりとじっくりとお湯を注いでコーヒーが一滴ずつ落ちてくるような丁寧に紡がれた話。

ぜひ手に取ってみてください^^

 

◆さいごに

本作の雛子の様子はまるで江國さんのようだと思った。

ワイン、本が好き、音楽も好き、旅行も好き。

どこか繊細な様子の主人公は江國さんを彷彿とさせます。

 

江國さんの小説やエッセイでは、よく静謐な様子が伝わってくる。

物悲しいような、懐かしいような。

そういう感傷に浸りたい時には彼女の作品がぴったりだと思います。

個人的には2年前に古本屋で購入した、「すいかの匂い」が家に眠っています。

本棚から探してゆっくりと江國ワールドに浸ろうと思います(*´ω`*)

 

ここまで読んでくれてありがとうございました☆